感覚記憶
感覚記憶とは、目や耳などの感覚器で受け取った外界の情報を一時的に保持しておくための記憶です。
感覚記憶のひとつである「アイコニック・メモリ(iconic memory)」は、「映像的記憶」とも言い、視覚的な情報を一時保存します。ほぼ、一瞬だけ目で覚えるといったくらい。アイコン的な記憶ということですね。
同じく感覚記憶である「エコイック・メモリ(echoic memory)」は、聴覚的な情報を一時保存します。エコーを保つというわけです。アイコニック・メモリと比べるともう少し長く、数秒間は保持されるようです。
短期記憶
感覚記憶に残って注意をひいた情報は、短期記憶に保持されます。短期記憶とは、数分もしくは数十分くらい保たれる記憶です。今聞いた電話番号とか、ホテルのルームナンバーなどですね。
チャンク:7±2
チャンク(塊)とは、心理学者のジョージ・ミラーが提唱した、「情報のまとまり」を意味する概念です。
たとえば「いぬふぐり」は5文字なので5チャンクですが、「いぬ」と「ふぐり」の合成された単語として覚えたら2チャンクになります。イヌフグリの花のことをよく知っていたら1チャンクとして覚えていることでしょう。
電話番号を覚える際も、「090」を1チャンクとして記憶している人は多いのではないでしょうか。
ミラーさんによると、人間が一度に記憶できる情報の数はおおよそ7±2の範囲、つまり、少ない人で5つ、多い人で9つくらいになるとのことです。
7±2のことをマジックナンバーとも呼んでいます。
長期記憶
短期記憶は、必要に応じて「海馬」を通じて長期記憶になります。
長期記憶は「宣言的記憶」と「手続き記憶」から成ります。
宣言的記憶(陳述記憶)
・エピソード記憶
個人が経験した内容に関する記憶です。「何」があったかということだけでなく、そのときの周りの状況や雰囲気、感情などの自分の心理・身体的な反応も含めて記憶されています。
・意味記憶
「犬とは四つ足の動物で、人間がよく飼っている」といったような、一般的な意味についての記憶です。
手続き記憶
「鉛筆の削り方」「自転車の乗り方」といったような、行動に関する記憶です。「身体で覚えていること」といってもいいでしょう。
「記憶」について学ぶ
京都教育大学の田爪先生による「心理学で考える記憶のしくみ」がコンパクトにまとまっていてわかりやすかったです。
心理学で考える記憶のしくみ/京都教育大学 田爪 宏二 先生【夢ナビTALK】
日本心理学会のサイトでも、記憶についての専門家のエッセイをいくつか読むことができます。
心理学ミュージアムの「虚記憶 | 展示室 記憶 | 心理学ミュージアム - 日本心理学会」についての説明。
「記憶」についての予想問題・過去問
精神保健福祉士の過去問などを参照して、記憶についての予想問題を考えてみます。
正しいものを選びなさい
- 認知症の記憶障害では、短期記憶よりも長期記憶が低下する。
- 「愛知県の県庁所在地は、名古屋市である」という記憶はエピソード記憶である。
- 「幼少期に習得したピアノの曲を、大人になっても弾くことができる」という記憶は、手続き記憶である。
- 意味記憶は、少ない容量の記憶を一時的に保持する記憶である。
1 間違い
2 間違い。これは意味記憶ですね。
3 正解
4 間違い。これは短期記憶の説明です。
記憶などの神経心理学に関してより詳細に勉強したい人には、次のテキストがおすすめです。