公認心理師試験勉強として、保健医療分野における法律や制度をまとめています。あくまで個人的な覚書です。
医療法
日本の医療の制度についての法律です。病院や診療所(クリニック)、助産所など、医療を提供する施設の開設や管理について、国や自治体の責任、医療者の責任などが定められています。
助産所も含まれているんですね。
医療法の理念・病院と診療所について
医療法の「総則」として、第一章第一条に次のように定められています。
この法律は、医療を受ける者による医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項、医療の安全を確保するために必要な事項、病院、診療所及び助産所の開設及び管理に関し必要な事項並びにこれらの施設の整備並びに医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を推進するために必要な事項を定めること等により、医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする。
大事なポイントとしては、1997年の医療法の改正で「説明と同意」つまり 「インフォームドコンセント」(:informed consent「十分な情報を得た(伝えられた)上での合意」)が明文化されたというところだと思われます。
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医療の選択・広告規制
日本では、患者が医療機関を自由に選択できるフリーアクセス制となっています。
日本の医療はフリーアクセスであり、受診する医療機関を自由に選ぶことができる。こ うした制度を採用することにより、我が国は、誰もが安心して医療を受けることができる医療制 度を実現し、世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してきた。厚生労働省「質の高い医療サービスの安定的な提供」
フリーアクセスのメリット、デメリットについては、議論もありますね。
医療法における病院・診療所などの広告規制については、厚生労働省のサイトにまとめられています。
高須クリニックの広告をめぐっての騒動?をまとめたページ
医療の安全
医療安全支援センターは医療法第6条の13の規定に基づき、都道府県、保健所を設置する市及び特別区により、日本全国で380箇所以上設置されています。医療安全支援センターは、このように皆様の身近な所で、医療に関する苦情・心配や相談に対応するとともに、医療機関、患者さん・住民に対して、医療安全に関する助言および情報提供等を行っています。
のだそうです。
医療事故が発生した医療機関において院内調査を行い、その調査報告を民間の第三者機関(医療事故調査・支援センター)が収集・分析することで再発防止につなげるための医療事故に係る調査の仕組み等を、医療法に位置づけ、医療の安全を確保するものです。
とのこと。
病院・診療所
医療法においては、医業を行うための場所を病院と診療所とに限定し、病院と診療所との区分については、病院は20床以上の病 床を有するものとし、診療所は病床を有さないもの又は19床以下の病床を有するものとしている。
病院については傷病者に対し真に科学的かつ適正な診療を与えることが出来るものであることとし、構造設備等についても相当 程度、充実したものであることを要求している。
また、診療所については19床以下の病床を有する診療所について構造設備等に関し病院に比べて厳重な規制をしていない。
と定められています。
医療提供体制の確保
日本における医療計画(いりょうけいかく)とは、日常生活圏で通常必要とされる医療の確保のため、都道府県が作成する整備計画。二次医療機関を単位とし、地域医療の効率化・体系化をはかるもの。医療法第30条で定められている。wikipedia
医療法人制度
一般社団法人日本医療法人協会によると、日本には53000の医療法人があるのだそうです(2017年3月現在)。
医療法では、医療法人は次のように定義されています。
「病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする 社団 又は 財団 」(39条1項)
それくらい知っとけばいいかな。
地域保険法
この法律は、地域保健対策の推進に関する基本指針、保健所の設置その他地域保健対策の推進に関し基本となる事項を定めることにより、母子保健法(昭和40年法律第141号)その他の地域保健対策に関する法律による対策が地域において総合的に推進されることを確保し、もつて地域住民の健康の保持及び増進に寄与することを目的とする。
というわけで、主に保健所の活動についての法律ですね。「保健所は、地域住民の健康を支える中核となる施設です。疾病の予防、衛生の向上など、地域住民の健康の保持増進に関する業務を行っています。地域保健法に基づいて、都道府県、指定都市、中核市、特別区などに設置されています」とのこと(厚生労働省)。
こんな図が厚生労働省のサイトに掲載されています。
精神保健福祉法
- 精神障害者の医療及び保護を行うこと
- 障害者総合支援法とともに、精神障害者の社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行うこと
- 精神疾患の発生の予防や、国民の精神的健康の保持及び増進に努めること
によって、精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的とした法律と定められています。
私宅監置の禁止
1950年制定の精神衛生法で「私宅監置の禁止」(いわゆる座敷牢ですね)が定められましたが、最近のニュースを見ると、不幸なことに今でもこのような境遇に置かれている精神障害者もいるようです。
日本精神神経学会には、私宅監置や拘束具に関するページがあります。
濯水籠(鉄製)
籠の中に患者を閉じ込め、上より蒸露え水を注ぐ治療を行った。治療器具のひとつであるも、患者を閉じ込めるという意味で、拘束具のひとつといえる。
とあります。「治療器具」にはとても見えません。
精神保健指定医
精神科医の精神科医療においては、患者に入院を強制したり、身体拘束を含む行動制限を行わざるをえない場面が存在する。しかし、人身の自由を直接制約するものであるから、これらの人権の侵襲が妥当なものかどうかの判断は、精神医療及び法制度に通暁した者によって慎重になされなければならない。wikipedia
任意入院
【対象】 入院を必要とする精神障害者で、入院について、本人の同意がある者
【要件等】 精神保健指定医の診察は不要
医療保護入院
【対象】 入院を必要とする精神障害者で、自傷他害のおそれはないが、任意入院を行う状態にない者
【要件等】 精神保健指定医(又は特定医師)の診察及び家族等のうちいずれかの者の同意が必要 (特定医師による診察の場合は12時間まで)
措置入院・緊急措置入院
【要件等】 精神保健指定医2名の診断の結果が一致した場合に都道府県知事が措置 (緊急措置入院は、急速な入院の必要性があることが条件で、指定医の診察は1名で足りるが、入院期間 は72時間以内に制限される。)
応急入院
【対象】 入院を必要とする精神障害者で、任意入院を行う状態になく、急速を要し、家族等の同意が得られない者
【要件等】 精神保健指定医(又は特定医師)の診察が必要であり、入院期間は72時間以内に制限される。 (特定医師による診察の場合は12時間まで)
と定められています(医療保護入院制度について|厚生労働省)。
心神喪失者等医療観察法
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)は、心神喪失又は心神耗弱の状態(精神障害のために善悪の区別がつかないなど、刑事責任を問えない状態)で、重大な他害行為(殺人、放火、強盗、強制性交等、強制わいせつ、傷害)を行った人に対して、適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的とした制度です。
です。
このような流れになっています。
には、
本制度は,最終的には対象となる人の社会復帰を促進することを目的としています。 精神の障害のために善悪の区別がつかないなど,通常の刑事責任が問えない状態のうち,まったく責任を問えない場合を心神喪失,限定的な責任を問える場合を心神耗弱と呼びます。このような状態で重大な他害行為が行われることは,被害者に深刻な被害を生ずるだけでなく,その病状のために加害者となるということからも極めて不幸な事態です。そして,このような人については,必要な医療を確保して病状の改善を図り,再び不幸な事態が繰り返されないよう社会復帰を促進することが極めて重要であると言えます。
と書かれていました。
医療保険
にまとめられています。
その他関連する法規と制度
『公認心理師現任者講習会テキスト』には関連する法規と制度として、以下のものが挙げられていました。
介護保険制度
地域精神保健サービス
成年後見制度
物質乱用・依存関連法規
介護保険制度
高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みが介護保険です。
- 自立支援:ただ高齢者の身の回りの世話をするだけでなく、高齢者の自立を支援することを理念としています。
- 利用者本位:利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、福祉サービスを総合的に受けられる制度
- 社会保険方式:給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用
地域精神保健サービス
地域精神保健(Community Mental Health) | 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会復帰研究部
知的障害者福祉法・知的障害者更生相談所
知的障害者福祉法とは、知的障害のある人の福祉と自立をはかることを目的とした法律です。知的障害者福祉法(旧:精神薄弱福祉法)は、1960年に制定されました。最初は「生活支援」がその目的でしたが、現在は、自立と社会参加の促進が定められています。
(この法律の目的) 第一条 この法律は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)と相まつて、知的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、知的障害者を援助するとともに必要な保護を行い、もつて知的障害者の福祉を図ることを目的とする。
各都道府県に、知的障害者厚生相談所が設置され、療育手帳の判定や交付、専門的な相談支援などを行なっています。
児童相談所
児童福祉法第12条に定められ、自治体に設置されています。 「こども家庭センター」という名称もあります。
0歳から18歳未満の子どもの健やかな成長のため、子どもと家庭のさまざまな問題について相談援助活動を行なっています。
こんなポスターを見かけたことがある人は多いかもしれません。
療育手帳
大人の知的障害かも?というときのサポートと療育手帳について - 子ども情報ステーションby ぷるすあるは
に詳しく説明されていました。
成年後見制度
認知症にんちしょう,知的障害ちてきしょうがい,精神障害せいしんしょうがいなどの理由で判断能力はんだんのうりょくの不十分な方々は,不動産や預貯金などの財産を管理したり,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約けいやくを結んだり,遺産分割いさんぶんかつの協議をしたりする必要があっても,自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また,自分に不利益な契約けいやくであってもよく判断ができずに契約けいやくを結んでしまい,悪徳商法あくとくしょうほうの被害にあうおそれもあります。このような判断能力はんだんのうりょくの不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度せいねんこうけんせいどです。
物質乱用・依存関連法規
- 覚せい剤取締法
- 麻薬及び向精神薬取締法
- 大麻取締法
- あへん法
- 毒物及び劇物取締法
といった法律によって、薬物の輸出入、製造、譲渡、所持、使用などが規制されていて、違反した場合には処罰を受けます。
国立精神・神経医療研究センターの「薬物問題 相談員マニュアル」から。
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/reference/pdf/soudanManual.pdf
障害年金
障害年金とは、病気やケガ、障害によって仕事や生活などが制限される場合に受け取ることができる国の公的な年金です。
初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合には、「障害基礎年金」が、厚生年金に加入していた場合には「障害厚生年金」が請求できます。
生活保護
資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度です。