公認心理師についてのノートです。
公認心理師法に「秘密保持義務」が定められていて、また「職業倫理の7原則」に「秘密を守る(第5原則)」とあるように、守秘義務はクライエントを守るために重要なことです。
しかし、虐待が疑われる場合や、明確で差し迫った生命の危機があるときなどは、クライエントの承諾なしに情報を必要なところ(例えば警察とか、保護者)に提供することがあります。
タラソフ判決
Dr林のこころと脳の相談室にある、
という記事にわかりやすく記述されていました。
タラソフ判決、タラソフ原則のきっかけとなったタラソフ事件とは、次のような者でした。
タチアナ・タラソフさんという女性がポダーという男に殺害されたのですが、ポダーはそのとき精神科に通院していました。ポダーは診察場面で、主治医のモーレ医師に「タラソフを銃で撃つ」と話し他のですが、主治医は守秘義務のためそれを口外しませんでした。
診察室での予告通り、ポダーはタラソフさんを殺害してしまい、その後、タラソフの両親がモーレ医師を訴えます。
「知ってたなら、なぜ知らせてくれなかったんだ」
という思いは、家族として当然のことですね。
最高裁まで争われ、
医師や治療者は、患者によって危険が及ぶと予測される人を、危険から守る方策を取るべきである。
というタラソフ判決が下されました。
詳しくは上記リンク先を。
アメリカにおける精神科医療過誤訴訟 - J-Stage
にもタラソフ判決の詳細とともに、患者の自殺防止義務や、第三者保護義務(タラソフ事件のような事態です)などについて触れられています。
『公認心理師必携テキスト』にも守秘義務とタラソフ判決について詳しく取り上げられていました。
守秘義務の例外的状況
守秘義務の例外的状況としては、次の8つが挙げられます(『公認心理師現認者講習会テキスト』『公認心理師必携テキスト』から)。
- 明確で差し迫った生命の危険があり、攻撃される相手が特定されている場合
- 自殺など、自分自身に対して深刻な危害を加えるおそれのある緊急事態
- 虐待などが疑われる場合
- そのクライエントのケアなどに直接関わっている専門家同士で話し合う場合(相談室内のケース・カンファレンスなど)
- 法による定めがある場合
- 医療保険による支払いが行われる場合
- クライエントが、自分自身の精神状態や心理的な問題に関連する訴えを裁判などによって提起した場合
- クライエントによる明示的な意思表示がある場合
また、タラソフ判決によって示された「警告義務」として、次の4点が挙げられています(『必携テキスト』では②が二つありますが、これは誤植でしょうね)。
- 犠牲者となりうる人に対してその危険について警告する
- 犠牲者となりうる人に対してその危険を知らせる可能性のある人たち(家族や親しい友人など)に警告する
- 警察に通告する
- ほかに、その状況かで合理的に必要と判断される方法を、どのような方法であっても実行する
守秘義務などの倫理問題に関連する基本テキストは、次の記事でも取り上げています。
試験前の最後の追い込みは、次のドリルを使っている人が多いようですよ。
東京リーガルマインド へ。
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