問8は、「パーソナリティや自我状態に関する心理検査について」です。これは、病院などで心理テストを業務として行なっている人にとっては、サービス問題といってもいいかもしれません。
MAS
MASは「顕在性不安尺度」です。身体的不安や精神的不安などの程度を測定できる、不安のスクリーニングテストです。MMPIから選ばれた不安尺度50項目+妥当性尺度15項目を加えた合わせて65項目からなる質問紙です。
ですので、「多面的にパーソナリティを測定する検査」というところが間違っていますね。
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IAT
IATは、Implisit Association Testの略で「潜在連合テスト」と訳されます。日本心理学会の心理学ミュージアムの解説にあるように、例えば「花と虫、どちらが好きですか?」といったことをパソコンのボタンを押すことで回答してもらうテストです。
「見えない気持ち」つまり潜在的な連想・連合をあぶり出すテストですので、「顕在的意識レベルの自尊心の個人差を測定する」という文章は間違っています。
では、実際にテストを受けてみることができます。
人々が「心の中にあるもの」をいつも語っているわけではないことはよく知られています。また、「心の中にあるもの」を正確に知り得ているかどうかも疑わしいことです。こういった乖離について理解することは、科学的心理学にとって重要なことです。 このサイトでは、意識と非意識の乖離という問題について、これまでの手法よりもはるかに説得力のある技法について紹介しています。この新しい手法はImplicit Association Test(略してIAT)と呼ばれています。
と説明されていました。
NEO-PI-R
Revised NEO Personality Inventoryの略ですが、略でも十分長いですね。これは5因子性格理論に基づいた質問紙性格検査です。
パーソナリティを、
- N:神経症傾向
- E:外向性
- O:開放性
- A:調和性
- C:誠実性
という5つの次元からとらえます。
それぞれの次元は、さらに6つの下位次元で構成されているので、詳細なパーソナリティのプロフィールを得ることが可能です。
設問の選択肢③には、「パーソナリティの6つの次元を測定」とあるので誤りです。
東大式エゴグラム
エリック・バーンが創始した交流分析の理論に基づいた心理テストです。
パーソナリティを5つの自我状態から捉えようとします。
バーンはP(親)、A(大人)、C(子ども)の3つの自我状態を提唱しました。
弟子のジョン・M・デュセイは、それを細かくして、CP、NP、A、FC、ACに分類しました。
選択肢④には「3タイプのいずれか1つに分類する検査」とありますが、どれか1つに当てはめるのではなく、5つの自我状態の高低のプロフィールからパーソナリティを把握するのがエゴグラムです。
YG性格検査
矢田部ギルフォード性格検査が正式名称です。ギルフォードが作った性格テストを元に、日本で矢田部達郎が作成しました。
以前は、病院や産業領域、学校などで広く使われていましたが、最近は使用頻度は減っているのではないかと思われます(個人的な印象なので、実際のところは不明です)。
120項目の質問に「はい」「いいえ」「どちらでもない」で回答することで、
- D尺度(抑うつ性)
- C尺度(回帰的傾向)
- I尺度(劣等感)
- N尺度(神経質)
- O尺度(客観性)
- Co尺度(協調性)
- Ag尺度(攻撃性)
- G尺度(一般的活動性)
- R尺度(呑気さ)
- T尺度(思考的外向)
- A尺度(支配性)
- S尺度(社会的外向)
という12の特性からなるプロフィールが得られます。
というわけで、選択肢⑤が正解と思われます。
「第1回公認心理師試験(平成 30 年9月9日実施分)の合格基準及び正答について」でも正答は⑤でした。