障害者虐待防止法
障害者虐待防止法は、正式名称を「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」と言います。
第一章の「総則」に法律の目的が書かれています。ポイントをまとめると、
- 虐待は障害者の尊厳を害する
- 障害者の自立及び社会参加にとって障害者に対する虐待を防止することが極めて重要
- 障害者に対する虐待の禁止
- 障害者虐待の予防及び早期発見
- 障害者の虐待防止に関する国などの責務
- 虐待を受けた障害者の保護及び自立のための支援
- 擁護者による障害者虐待の防止に資する支援
などが挙げられます。上記のような施策を促進することで、障害者の権利利益を擁護することが大きな目的です。
障害者虐待の実際
2018年8月23日の日本経済新聞に次のようなニュースが掲載されました。
厚生労働省のまとめでは、雇用主や職場の上司から虐待を受けた障害者は、2017年に1308人で、前年度比336(35%)増加し、13年度の集計以来、最多となったとの報道です。
厚労省によると、「障害者虐待防止法の周知が進んだことやハラスメント防止の意識が高まり、通報や相談が増えたと考えられる」とのこと。
障害者虐待防止法では、「使用者による障害者虐待」として次のような行為が挙げられています。
一 障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれのある暴行を加え、又は正当な理由なく障害者の身体を拘束すること。二 障害者にわいせつな行為をすること又は障害者をしてわいせつな行為をさせること。三 障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応又は不当な差別的言動その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。四 障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、当該事業所に使用される他の労働者による前三号に掲げる行為と同様の行為の放置その他これらに準ずる行為を行うこと。五 障害者の財産を不当に処分することその他障害者から不当に財産上の利益を得ること。
上から「身体的虐待」「性的虐待」「心理的虐待」「ネグレクト」「経済的虐待」に該当します。
報道では、最低賃金より低い額で働かせるなどの「経済的虐待」(1162人)が最も多く、暴言などの「心理的虐待」(116人)、殴られるなどの「身体的虐待」(80人)が続いているとのことです。
動画のニュースも公開されていました。
障害者雇用促進法と「水増し」事件
国が率先して、法律の理念を台無しにしているわけで、これも「障害者虐待」「障害者の権利侵害」と言うべき問題です。
障害者の雇用対策
厚労省のサイトによると、障害者の雇用対策は次のような概要となっています。
障害者の就労意欲は近年急速に高まっており、障害者が職業を通じ、誇りをもって自立した生活を送ることができるよう、障害者雇用対策を進めています。
障害者の雇用対策としては、障害者雇用促進法において、まず、企業に対して、雇用する労働者の2.2%に相当する障害者を雇用することを義務付けています(障害者雇用率制度)。
これを満たさない企業からは納付金を徴収しており、この納付金をもとに雇用義務数より多く障害者を雇用する企業に対して調整金を支払ったり、障害者を雇用するために必要な施設設備費等に助成したりしています(障害者雇用納付金制度)。
また、障害者本人に対しては、職業訓練や職業紹介、職場適応援助等の職業リハビリテーションを実施し、それぞれの障害特性に応じたきめ細かな支援がなされるよう配慮しています。
国や自治体の法定雇用率はこの4月から2・5%に引き上げられたそうですが、「水増し」がまかりとおると障害者雇用促進法の理念もないがしろにされてしまいます。
障害者虐待防止法に関する予想問題・過去問
介護福祉士の過去問に、障害者虐待防止法に関する問題がありました。
「障害者虐待防止法」に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 . 対象となる虐待の範囲は、身体的虐待、心理的虐待及び性的虐待の3種類とされている。
2 . 市町村は、虐待に対応するために地域活動支援センターを設置することが義務付けられている。
3 . 家族による虐待に対しては、市町村が通報を受理して、身体障害者更生相談所または知的障害者更生相談所が対応することとされている。
4 . 施設サービスでの従事者による虐待は対象となるが、障害者の雇用主による虐待は対象外とされている。
5 . 医療機関の管理者は、医療機関を利用する障害者に対する虐待を防止するために必要な措置を講ずることとされている。 ( 介護福祉士国家試験 第26回(平成25年度) 社会の理解 )
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正解は5番です。
1:対象となる虐待は「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」「経済的虐待」「放置・放棄」の5つです。
2:虐待に対応するために設置が義務づけられているのは「市町村障害者虐待防止センター」「都道府県障害者権利擁護センター」です。
3:「障害者虐待防止センター」が通報を受理します。対応するのは、市町村の福祉課や警察などです。市町村は「相談等、居室確保、連携確保」の責務を負っており、事実確認(立ち入り調査など)や措置(一時保護、後見審判請求)などを行う必要があります。
4:雇用主による虐待も対象です。
8月29日追記
どんどんボロが出てきてるようですね。「当時の法定雇用率」は、2.3%、この4月からは2.5%です。