公認心理師試験に備えての個人的な覚書です。
「心理状態の観察及び結果の分析」(心理アセスメント)について、出題基準(ブループリント)のキーワードを中心にまとめています。予想問題もいくつか。
- (1)心理的アセスメントに有用な情報(生育歴や家族の状況等)とその把握の手法等
- (2)関与しながらの観察
- (3)心理検査の種類、成り立ち、特徴、意義及び限界
- (4)心理検査の適応、実施及び結果の解釈
- (5)生育歴等の情報、行動観察、心理検査の結果等統合と包括的な解釈
- (6)適切な記録、報告、振り返り等
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第5回公認心理師試験「出題基準」(ブループリント(公認心理師試験設計表)を含む。)
過去問はこちら
- 第1回公認心理師試験(平成30年9月9日実施分)午前問題 (PDF:1.21MB)
- 第1回公認心理師試験(平成30年9月9日実施分)午後問題 (PDF:1.20MB)
- 第1回公認心理師試験(平成30年12月16日実施分)午前問題 (PDF:1.21MB)
- 第1回公認心理師試験(平成30年12月16日実施分)午後問題 (PDF:1.20MB)
- 第2回公認心理師試験(令和元年8月4日実施)午前問題 (PDF:1.30MB)
- 第2回公認心理師試験(令和元年8月4日実施)午後問題 (PDF:1.30MB)
- 第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)午前問題 (PDF:1.2MB)
- 第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)午後問題 (PDF:1.2MB)
- 第4回公認心理師試験(令和3年9月19日実施)午前問題 (PDF:1.3MB)
- 第4回公認心理師試験(令和3年9月19日実施)午後問題 (PDF:1.3MB)
ダウンロードして一つのフォルダに放り込んでキーワードで検索すると便利です。
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(1)心理的アセスメントに有用な情報(生育歴や家族の状況等)とその把握の手法等
テストバッテリー
質問紙や投影法、知能検査など、複数の心理検査を組み合わせて実施し、クライエント(要支援者)のパーソナリティや能力、行動特性などを多角的・総合的に理解しようとすることを「テスト・バッテリーを組む」などと表現します。
テストバッテリーについては、例えば次のような予想問題が考えられます。
正誤で答えよ。
⬜︎ YG性格検査、MAS、CMIなどは、相関が高いため、テストバッテリーとして同時に実施することによって得られるクライエントに関する情報が豊かになる。
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これは間違いですね。同じタイプの心理検査ばかり組み合わせても、被験者(クライエント)の負担が大きくなるばかりで、得られる情報は限られてしまいます。
アセスメント
「査定」との意味です。
心理アセスメントは、心理的な援助を行う際に、クライエントの状態や能力、病態などを理解し、「見立てる」ために行われます。
方法としては、「面接法」「観察法」「検査法」など。
面接法
主訴や来談の動機、生活歴、家族関係などを面接を通じて把握します。
観察法
クライエントの表情や行動、他者との関わり方などを観察します。
検査法
狭義の心理アセスメントで、心理査定法とも呼ばれています。上述のように、質問紙法、投影法、知能検査、作業検査などを組み合わせて実施することが多いと思われます。
ケース・フォーミュレーション
アセスメントで得られた情報をもとに、クライエント・ケースの見立てを行い、治療・支援・介入の方法や方向性を定めることを「ケース・フォーミュレーション(事例の定式化)」と呼びます。見立てをして治療計画を立てる、ということですね。
『公認心理師現認者講習テキスト』によると、診断には
- 事例定式化
- カテゴリカルな範疇分類(DSMなど)
の二つがあります。
事例定式化(ケース・フォーミュレーション)とは、クライエントの意識的・無意識的な問題や不適応(感)を心理めん・現実的な生活面からとらえ、それらの背景にある要因を整理して介入へとつなげる複合的評価いわゆる「見立て」のことをいう。p.146
と書かれていました。
機能分析(行動分析)
問題行動(標的行動)の維持要因を、行動の連鎖にそって明確化するのが機能分析
熊野宏昭「機能分析に基づく認知行動療法」[pdf]
です。「行動分析」とも呼ばれています。
- どんな状況で起こるのか(弁別刺激・確立操作、条件刺激)
- どんな行動か(標的行動)
- 直後(60秒以内)にどのような結果が起こっているか(結果)
という、いわゆる「三項随伴性」を明確にすることですね。
次のサイトは、動画などもあって、わかりやすく解説されていました。
インフォームド・コンセント
インフォームド・コンセント(informed consent)とは、「説明を受け納得したうえでの同意」といった意味合いの、医療でよく用いられる言葉です。
『公認心理師現認者講習テキスト』には、インフォームド・コンセントの具体的内容として、次のような項目が挙げられています。
インフォームド・コンセントは、公認心理師の職業倫理的な責任でもあります。
薬剤師国家試験の過去問に、インフォームド・コンセントに関する問題がありました。
インフォームド・コンセントに関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 治療におけるデメリットについても説明する必要がある。
2 プライバシーの保護のために必須とされている。
3 医療従事者が治療を受ける場合には必要とされない。
4 説明を受ける側の理解度は考慮しなくてよい。
5 パターナリズムに基づくものである。
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正解は「1」です。
診断的評価
このキーワード、よく分かりませんでした。
DSMなどの診断基準のことを言ってるのでしょうか?
ネットで調べたところ、
指導の前に、教える側が学習者の状況を把握するために行う評価のこと。具体的には、基礎学力テスト、適性テスト、パーソナリティーテストなどが挙げられる。 診断的評価を行うことにより、学習者に合った教育目標やカリキュラムを選択できる。また、学習者のレディネスが不十分と判断された場合は、指導内容の前提となる知識について補習したり、個別のインストラクションを行うことがある。コトバンク「診断的評価」
という説明もありました。
教育分野でよく用いられる言葉のようです。
「ブルームの完全習得学習理論」によると、「診断的評価」「形成的評価」「総括的評価」に3つの評価を通して、指導と評価は一体的に捉えられるのだそうです。
「診断的評価」とは、前もって学習者の実態を把握してそれに合わせた指導計画を立てるための評価。
「形成的評価」とは、学習者がどの程度理解したかを確認するための評価。
「総括的評価」とは、試験などによる評価で、学習者が自身の努力の結果をしることだそうです。
精神疾患の診断分類・診断基準<ICD-10、DSM-5>
DSM−ⅣからDSM−5への改定の日本語版が出てまもないので、試験にも出題されやすいかもしれません。
「ICD-10」(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)に関する精神保健福祉士の過去問。
問題 4 次のうち, ICD–10 (国際疾病分類第10版)で「F4. 神経症性障害, ストレス関連障害及び身体表現性障害」に分類されるものとして, 正しいものを1つ選びなさい。
1 一過性全健忘
2 気分変調症
3 ガンザー症候群
4 レット症候群
5 トゥレット症候群
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正解は、「3」のガンザー症候群です。ガンザー症候群とは、拘禁状態での心理反応として見られることのあるヒステリー性の精神症状です。的の外れた応答をするようなもうろう状態を表す言葉です。
リンク先のサイトの
設問のF4は「神経症性障害, ストレス関連障害及び身体表現性障害」の分類となります。つまり, ストレスによって生じる外因性の精神疾患を選択肢の中から選ぶ問題になると思います。
という記述は、「外因性」ではなく「心因性」の間違いだと思われます。
また、社会福祉士の過去問に「DSM-5」に関するものがありました。
精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM− 5 )の「躁病エピソード」に記載されている症状はどれか。正しいものを1 つ選びなさい。
1易怒的
2 睡眠過多
3 幻覚
4 疲労感
5 強迫行為
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正解は、「1」の「易怒的」ですね。
半構造化面接
半構造化面接(semi-structured interview)とは、定められた一定の質問に遵いながら行う面接法です。きっちりと決められている構造化面接と比べると、質問の表現の仕方であるとか、内容などを、状況に応じて変化することができる、より自由度の高い方法です。
構造化面接の代表的なものとしては、
- BPRS(簡易精神医学的評価尺度)
- SCID(DSM-Ⅳ用構造化面接)
などが挙げられます。精神医学の研究などでよく用いられていますね。
インテーク面接
インテーク面接(初回面接・受理面接)とは、クライエントが相談機関を訪ねた際に最初に行われる面接のことです。
クライエントとのラポールをつくった上で、主訴や症状を把握し、適切なアセスメント(見立て)とケース・フォーミュレーションを行い、クライエントに必要なことを伝えます(インフォームド・コンセント)。その機関で支援を引き受けることが適切ではないと判断された場合には、より適切な支援さきへとリファー(紹介)することもあります。
精神保健福祉士の過去問に、インテーク面接に関するものがありました。
精神科医療機関の精神保健福祉士が行うインテークにおける次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 . 個別支援計画を作成する。
2 . 具体的な援助を実施する。
3 . 現状を総合的に理解し評価する。
4 . 患者と信頼関係を形成する。
5 . 面接票の事項に沿って質問する。 ( 第18回(平成27年度) 精神保健福祉士国家試験 精神保健福祉の理論と相談援助の展開 )
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正解は、「4」だそうです。「3」と迷いそうですね。
生物心理社会モデル[biopsychosocial model]
生物心理社会モデル(bio-psycho-social model)とは、人間を生物的(医学的)側面・心理的側面・社会的側面から総合的に捉えようとする視点です。
生物心理社会モデルに関する予想問題・過去問|公認心理師試験対策 - よろず覚え帖。
に、予想問題などを挙げています。
司法面接
司法面接(forensic interview)とは、子ども(および障害者など社会的弱者)を対象に行われる司法領域における面接です。
目的1:子どもからの聞き取りが子どもに与える負担をできる限り少なくする。
目的2:子どもから聞き取る話の内容が間違った誘導の結果ではないかという疑念がもたれる可能性をできるだけ排除する。
目的3:子どもの関わった事件が何らかの作為による虚偽の話ではなく実際にあった出来事であるかどうかを検討するための情報を得る。
といった目的で行われます。
次のようなニュースもありました。「魔法のアプローチ」という表現は誤解を招くと思いますが。
(2)関与しながらの観察
「関与しながらの観察」(participant observation)とは、米国の精神科医ハリー・スタック・サリヴァンの言葉です。
サリヴァンは、患者に積極的に関わりながら、性格や対人関係のパターンなどを詳細に観察しました。
(3)心理検査の種類、成り立ち、特徴、意義及び限界
自然的観察
観察法には、大きく分けると「自然的観察」と「実験的観察」があります。自然的観察は、観察場面に対する操作をせず、そのままに起こっていることを観察しようとします。
学校で生徒の様子を観察するとか、病院の待合室での患者さんの様子を見るといったことが含まれると思われます。
実験的観察
一方、実験的観察とは、何らかの仮説を立てて、状況や場面をコントロールしながら行われるような観察です。ミルグラムの実験やストレンジシチュエーション法などが含まれます。
質問紙法
質問紙法(questionnaire method)とは、心理検査や社会調査などで用いられる、調査票や質問紙を使った方法です。
- 実施や採点が容易
- 客観性が高い
- 集団実施ができる
といったメリットがある一方で、
- 反応歪曲が生じやすい
- 質問項目の理解が必要
- 意識的な側面しか把握できない
というデメリットももっています。
代表的な質問紙検査の名称とその特徴を挙げておきます。
- 新版TEGⅡ(エゴグラム):交流分析理論に基づき「批判的な親」「養育的な親」「大人」「自由な子ども」「順応した子ども」という5つの自我状態からパーソナリティを捉える
- YG性格検査:矢田部ギルフォード性格検査の通称。120問からなる12尺度の質問紙心理検査。
- MMPI(ミネソタ多面人格目録):550項目からなる質問紙法パーソナリティ検査。4つの妥当性尺度(?、L、F、K)と10の臨床尺度(Hs、D、Hy、Pd、Mf、Pa、Pt、Sc、Ma、Si)が基本的な尺度として設けられている。MMPIとは
- CMI健康調査表:幅広い身体的・精神的自覚症状を把握する質問紙。
- NEO-PIR:5因子性格理論に基づいた質問紙。
投影法
あいまいで多義的な刺激に対する反応から、被験者のパーソナリティを把握しようとする心理検査です。あいまいな刺激に対しては、無意識的な側面が投映されるという仮説が背景にあります。
- 反応歪曲が生じにくい(意図的に回答しにくい)
- 子どもにも実施できる
というメリットと、
- 実施に時間がかかる
- 解釈に熟練が必要
- 解釈が主観的になりやすい
といったデメリットももっています。
代表的な投映法心理検査を挙げておきます。
- ロールシャッハ・テスト:左右対称のインクのしみに、被験者が何を見るかということから、パーソナリティを把握。
- TAT(主題統覚検査):絵を見て物語を作らせ、そこから心理状態を知ろうとします。
- SCT(文章完成法):不完全な文章を補って完成させてもらいます。
- P-Fスタディ(絵画欲求不満検査):フラストレーション状況が描かれた漫画の吹き出しに、自由にセリフを記入してもらいます。
- ソンディ・テスト:48枚の人物の顔写真から、好き嫌いを選んでもらいます。
描画法
描画法も投影法の一種です。描かれた絵から、描き手の心理状態を知ろうとします。
- バウムテスト:木の絵(あるいは「実のなる木」)を描いてもらいます。
- HTP法:家屋、木、家を描いてもらいます。
- 風景構成法:川や山など、検査者が述べる順に描いて、風景を完成させてもらいます。
- 人物画:人物を描いてもらう検査です。知能検査として用いられることもあります。
作業検査法
一定の作業を行ってもらうことを通じて、パーソナリティを捉えようとします。
- 内田クレペリン精神検査:一桁の足し算を行い、1分ごとの作業量の変化からパーソナリティを捉えます。
知能検査
知能を測定するための標準化された検査です。1905年にアルフレッド・ビネーとテオドール・シモンによって初めて知能測定尺度が開発されました。
試験に出題されやすいのは、ウェクスラー系の検査だと思われます。WISCやWAISの適用年齢や、各群指数の名称などを覚えておく必要があるでしょうか。
- 言語理解(VC)
- 知覚統合/知覚推理(PO/PR)
- 作動記憶(WR)
- 処理速度(PS)
など。
リタリコのサイトに詳しく解説されています。
発達検査
発達検査とは、乳幼児や児童の発達の水準を調べるための検査です。
保護者が回答する形式のものや、子どもが課題に取り組むことで発達水準を見ようとするものなどがあります。
乳幼児精神発達診断法(津守式):乳幼児の日常生活をよく知っている保護者(母親など)が質問に回答し、「運動」「探索」「社会」「生活習慣」「言語」の5領域について測定します。
新版K式発達検査:「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域を評価します。
こんな動画がありました。
心理テストを扱っている業者さんの発達関係検査のページを見ると、たくさんのテストがあるのがわかります。とても覚えられそうもありませんが、目を通しておくくらいはしてもいいかもしれません。
(4)心理検査の適応、実施及び結果の解釈
内閣府の「ユースアドバイザー養成プログラム」のサイトに心理検査を実施・解釈する上での留意点などが書かれていました。
(5)生育歴等の情報、行動観察、心理検査の結果等統合と包括的な解釈
『公認心理師現認者講習テキスト』の「心理アセスメントの実践」の章が参考になると思います。
「適切な理解に基づいて、技法を選択肢、かつ当事者に適した形で実施することが重要」(p.193)とのこと。
「情報把握の手立て」としては、
- 当事者や保護者からの聞き取り
- 関わりながらの行動観察
- 心理検査
- 関係機関からの情報把握
- 客観的情報と主観的情報
などが挙げられていました。
また、「把握が望まれる情報の内容」として、
- 当事者の状態像(身体的側面・心理的側面・社会的側面・生活リズムと基本的な生活習慣など)
- 生育歴(病歴や受診歴・家族の死別や別離・虐待・学校生活・就職・犯罪・災害など)
- 家族の状況(家族構成とジェノグラム・家族構成員の特徴・経済状況や具体的な生活)
などが記載されています。
(6)適切な記録、報告、振り返り等
同じく 『公認心理師現認者講習テキスト』の188頁に「心理的アセスメントとその初見について」という項目があります。
- 専門用語の多用は控える
- 潜在的な可能性への言及
- 検査状況への言及
- 具体的な改善・生きやすさのための提言
といったことが挙げられていました。
以下、アセスメントに関する関連本です。