バーンアウト
「バーンアウト(燃え尽き)」とは、「人を相手とする仕事を行う人々に生じる情緒的消耗感、脱人格化、達成感の減退の症候群」と定義されています(マスラックとジャクソン)。
バーンアウト (燃え尽き症候群) ヒューマンサービス職のストレス[pdf]
では、バーンアウトに関連する個人的な要因として、
- 「ひたむき」な性格
- 神経症傾向
- 年齢
が挙げられていました。最初の二つはよくわかりますね。三つめの「年齢」は、経験を積むとストレス状況により対処しやすくなると説明されています。
環境要因としては、
- 過重労働
- 自律性
- 役割ストレス
- 感情労働
の要因が取り上げられています。
過重労働とは、単に働く時間の長さというわけではなく、質的な負担も含まれています。
感情労働・共感疲労
職務として、感情のコントロールが求められる職業を「感情労働(emotional laboue)」と呼びます。
アメリカのアーリー・ホックシールドが「第三の労働形態」として提唱したのが「感情労働」という視点です。
看護師や医師、教師、公認心理師といった職業は、人を対象としたヒューマンサービスですので、そこには適切な感情表現が求められます。
いつもプリプリ怒っているカウンセラーなんていうのは問題なわけです。
感情労働は、「表層演技」と「深層演技」に分けることができます。
「表層演技」とは、感情(内面)とは異なる表情(表面)をしている状態。「深層演技」とは、内面と表面が一致している状態です。
後者の方がより、感情労働としてのストレスが少ないと考えられます。
ロジャーズのいう「自己一致」ですね。
「共感疲労」とは、人の苦しみや悲しみに共感しすぎて、援助者も疲労してしまうような状況を表すことばです。
地震などの自然災害のときに、ボランティアや専門的な支援者が共感疲労を起こしやすいと言われています。
直接支援に携わっていなくても、テレビや報道などで災害現場を見るだけでも共感疲労を起こすこともあります。
共感疲労が重なると、バーンアウトにつながりやすいと考えられます。
日本版バーンアウト尺度
上記の文献には、「日本版バーンアウト尺度」が取り上げられていました。
- こんな仕事, もうやめたいと思うことがある。 E
- われを忘れるほど仕事に熱中することがある。 PA
- こまごまと気くばりすることが面倒に感じることがある。 D
- この仕事は私の性分に合っていると思うことがある。 PA
- 同僚や患者の顔を見るのも嫌になることがある。 D
- 自分の仕事がつまらなく思えてしかたのないことがある。 D
- 1 日の仕事が終わると 「やっと終わった」 と感じることがある。 E
- 出勤前, 職場に出るのが嫌になって, 家にいたいと思うことがある。 E
- 仕事を終えて, 今日は気持ちのよい日だったと思うことがある。 PA
- 同僚や患者と, 何も話したくなくなることがある。 D
- 仕事の結果はどうでもよいと思うことがある。 D
- 仕事のために心にゆとりがなくなったと感じることがある。 E
- 今の仕事に, 心から喜びを感じることがある。 PA
- 今の仕事は, 私にとってあまり意味がないと思うことがある。 D
- 仕事が楽しくて, 知らないうちに時間がすぎることがある。 PA
- 体も気持ちも疲れはてたと思うことがある。 E
- われながら, 仕事をうまくやり終えたと思うことがある。PA
注 E:情緒的消耗感, D:脱人格化, PA:個人的達成感 (逆転項目)
この尺度を見ていると、バーンアウトしたときの症状や精神状態がうかがわれます。
バーンアウトからの回復
Bernier (1998)の研究にしたがって、バーンアウトからの回復過程が挙げられています。
- 「問題を認める」段階
- 「仕事から距離を取る」段階
- 「健康を回復する」段階
- 「価値観を問い直す」段階
- 「働きの場を探す」段階
- 「断ち切り, 変化する」 段階
といったように、6つのステージが提唱されていました。