臨床心理学雑記

最近は心理学・臨床心理学あたりの覚書

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RNRモデルと犯罪者処遇ー公認心理師試験

公認心理師資格試験、北海道の追試も終わりました。

受験されたみなさま、お疲れさまでした。

 

「RNRモデル」についての問題が出たらしい、と聞きましたが、よく知らない言葉だったのでちょっと調べてみます。

 

RNRモデルとは、Risk Need Responsivity modelの略で、犯罪者の処遇についての理論の一つです。

 

 

 

以下、次のサイトを参考にしながらの覚書です。

新旧犯罪者処遇モデル論争:医療モデルvs.公正モデルからRNRモデルvs. GLモデルまで – 立命館大学人間科学研究所

 

犯罪者処遇の医療モデル(Medical model)

  • 犯罪は疾患や不適応の表れ
  • 処遇は治療行為
  • 1930年代のアメリカで影響力を持ったモデル
  • 精神分析やソーシャル・ワークの影響

公正モデル(Justice model)

  • 1960年代、医療モデルへの批判
  • 保守派は刑罰の応報や抑止を強調(より厳格で正義にかなう処罰が必要)
  • リベラル派は、厚生理念がかえって受刑者の人権を侵害していると批判
  • 治療が終わるまで施設に収容されることでの人権侵害を批判

医療モデルは有効ではないー”What Works”論争

「更生への試みはわずかな例外を除いて再犯に対して何ら有効ではない」マーティンソンら

 

RNRモデル

  • 処遇は再犯リスクの高いものに集中(リスク原則)
  • 処遇は犯罪誘発要因に限定して行う(ニーズ原則)
  • 処遇は認知行動療法を中心にその者の応答性を高めるようになされるべき(応答性原則)

この原則に忠実であるほど、再犯リスクは低下するとのこと。

 

GLモデル(Good Lives model)による批判

  • RNRモデルはリスク管理中心で本人の動機付けと協力が弱い
  • RNRモデルの有効性の強調は、極端な介入を正当化してしまう

といった批判。

GLモデルの考え

  • 人間は生まれながらに「よさ」を追求する
  • 犯罪行為はその「よさ」を不適切な手段で得ようとした結果
  • 本人のエンパワメントを通じた「よさ」の獲得が目的
  • 「良き人生」の追求が結果的に犯罪のない「善き人生」につながる

 

リスク・ニード・リスポンシビティモデルを踏まえた保護観察処遇についての考察

には、次のように説明されていました。

RNRモデルは、リスク、ニードならびにリスポンシビティの 3 つの要素によって構成 されている。第 1 に、リスクに関しては、再犯の危険性の高低に応じた処遇を行うことが 有益であるとした。これは、再犯リスクが高い犯罪者には接触頻度を高めるなどの濃密な 処遇を行うことを意味するという。犯罪のリスク要因の具体について、Andrews & Bonta (2010)は、先行研究を検討した結果、次の 8 要因であるとした。すなわち、(a)反社会 的行動の経歴(たとえば、犯罪行動を開始した年齢の若さ、犯罪歴の多さ)、(b)反社会 的人格態度(たとえば、衝動性、自己中心性)、(c)反社会的認知(たとえば、犯罪の肯定、 正当化)、(d)反社会的な仲間、(e)家庭環境、(f)学業や仕事、(g)余暇、(h)物質乱用で ある。これらが複合的に作用して犯罪行動に結び付いているという2)。

 第 2 に、Andrews & Bonta (2010)は、ニードに関しては、犯罪を誘発する要因と誘発し ない要因を識別し、前者を再犯防止のために必要な要因として犯罪者処遇の対象とするこ とを重視した。この考え方は、再犯とは直接関係のない要因(たとえば、運動不足)を処 遇の焦点としないということも含意しているという。なお、処遇の焦点は、結果的には再 犯リスク要因と一致することが通例である。たとえば、不良交友が再犯リスク要因である 人には、交友関係の改善に焦点を当てた指導を行うことになる。

 

臨床心理学 第17巻第6号における「犯罪・非行臨床を学ぼう」という特集では、

RNRモデル : 再犯防止や社会復帰支援を効果的に推進するための方法論 (特集 犯罪・非行臨床を学ぼう) -- (犯罪・非行を研究する)

という論文が掲載されているようです。

今度、読んでみます。

 

 

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