臨床心理学雑記

最近は心理学・臨床心理学あたりの覚書

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公認心理師と臨床心理士の違いとこれから

臨床心理士とは

臨床心理士は、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する「民間資格」です。

昭和63年(1988年)に資格認定が始まり、2018年にはおよそ3万4千人の臨床心理士が認定されています。

これまで、病院の臨床心理技術者や学校のスクールカウンセラーとして勤務している人の多くが、臨床心理士有資格者でした。

カウンセラーの求人も「臨床心理士もしくは資格取得見込み」の人材が求められることが多かったといえます。

資格の取得にあたって、基本的には、大学院修了が必要であることや、5年に一度の資格更新手続きにより卒後の研鑽が求められることなどから、信用を得られている民間資格だといえるでしょう。

それでも、国家資格ではないことにより、たとえば医療領域で診療報酬を得にくいなどの問題もあり、「心理職の国家資格化」を期待する声は多かったのです。

 

関連する団体として、日本臨床心理士会日本心理臨床学会などがあります。

 

 

臨床心理士の仕事

臨床心理士資格認定協会のサイトには、臨床心理士の仕事として、次の四つが挙げられています。

①種々の心理テスト等を用いての心理査定技法や面接査定に精通していること。
②一定の水準で臨床心理学的にかかわる面接援助技法を適用して、その的確な対応・処置能力を持っていること。
③地域の心の健康活動にかかわる人的援助システムのコーディネーティングやコンサルテーションにかかわる能力を保持していること。
④自らの援助技法や査定技法を含めた多様な心理臨床実践に関する研究・調査とその発表等についての資質の涵養が要請されること

http://fjcbcp.or.jp/rinshou/about-2/

①がいわゆる心理アセスメント、②がカウンセリング、心理療法です。

③は地域支援や学校などでのコンサルテーションなどです。

④は、科学者−実践者モデルを背景に、現場の臨床心理士にも「調査・研究」が期待されていることを表しています。

 

臨床心理士の実際の職域としては、医療、教育、産業、福祉、司法など、多岐に渡っています。臨床心理士が、横断的な「汎用資格」として発展してきたためです。

 

国家資格化に至る経緯

おおざっぱにまとめると、1960年代から、日本のカウンセラーの資格化を求める声があり、賛成派と反対派に分かれて議論されました。心理臨床学会は、資格化賛成の人たちを中心に作られ、1988年の臨床心理士資格認定に至ります。

その後、「臨床心理士を国家資格にする」動きと、「医療心理士という医療に限った国家資格を作る」という二派が生まれました。

 

言語聴覚士精神保健福祉士などが国家資格化していくなか、心理職の意見はまとまらないままでした。

 

これは、臨床心理士資格が、汎用性を持った資格として認められてきたことや、医師会との政治的な関係が影響したと考えられます。

 

 

公認心理師法の成立

公認心理師法成立の経緯については、一般財団法人日本心理研修センターのサイトにまとまっています。

http://shinri-kenshu.jp/outline/schedule.html

 

2015年9月に、議員立法として国会に提出・可決されました。

 

臨床心理士と比べると、精神医学や基礎心理学など、さまざまな関係諸団体が関わってできた資格です。

「よりバランスのとれた資格となる」ともいえますし、「利害関係からの口出しも多くなる」とも予想されます。

 

公認心理師はどのような職場で働くことになるのか

医療現場では今後、公認心理師が求められるようになると予想されます。

臨床心理士を始めとして現在医療で働いている心理職は、当分は「見なし公認心理師」とされることになっているようです。

2019年に最初の公認心理師が誕生すれば、次は診療報酬が議論されるでしょう。

心理検査に加えて、現在、医師や看護師が担っている認知行動療法などが、公認心理師に認められるかといったことなどがポイントになると予想されます。

 

教育領域でも、スクールカウンセラーの応募資格として、公認心理師が求められるようになると考えられます。

 

福祉や産業、司法などの諸領域でも同様でしょう。

 

期待されているように仕事が増えるのか、それとも公認心理師の数が多くなり過ぎて、仕事が足らなくなるのか。スクールカウンセラーの時給は下がるだろう、という噂もすでに聞かれますが、待遇面も含めて気になるところです。

 

臨床心理士はこれからどうなる?

では、臨床心理士はこれからどうなっていくのでしょうか。

日本臨床心理士会が「公認会」に名称を変更するという話が2018年に出て、代議会で定款変更の議論が行われたが、結局は否決されたということがありました。

 

臨床心理士資格認定協会の方は、そもそも公認心理師資格化については慎重もしくは反対の立場を取っていました。国家資格が成立した後、臨床心理士がどうなっていくのかというビジョンを、どちらの団体も明確には提示できていないように感じられます。

 

すでに臨床心理士の要請を辞めてしまった大学・大学院もありますが、そういうところが多くなると、臨床心理士は先細りになっていきます。

 

いくつかの学会や団体では、公認心理師の上位資格を作ることを検討しているとの噂も聞きますが、臨床心理士がより高度な資格として認められることができれば、公認心理師とのダブルホルダーが生き残るかもしれません。

 

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